# 泥縄という言葉を知らない学生が多いのには驚く.ほんとに「高校」入試を潜り抜けたのか???
まず閑話休題
結果があって,それに価値があるから発表するのが当たり前.そして世の中,当たり前にはいかないもの.多くの研究者が,原稿の〆切に追われて,結果より前に原稿を執筆している.そんなときには次の順番で書くことになる.
1.システムモデル
そもそもどんな環境(例えば衛星通信のアップリンクとか)で,何(データ通信?)をしたいのか.そのうちどの部分(同期?
誤り率? 同時送信局数?)について議論するのか?具体的な条件は何か(フェージングは?
雑音は?)を述べた後,いわゆるシステムモデルを述べる.
システムモデルの説明では,なんでそんなモデルを使うのか,現実のどの部分が理想化(抽象化)されているのか明示すること.
通信システムのモデルであれば,まず送信データから送信波形,チャネル,受信波形,受信処理,受信データ迄の流れをのべる.その後,式での記述は受信波形(受信機の受信帯域フィルタの出力で)からときおこすのが書きやすい.(受信信号波形を式で示して,そこに送信機やチャネルの様子も繰り込む.AWGNをn(t)等で表すと,その電力が無限大であるから記述が困難.帯域制限してからなら電力も有限で扱いやすい.)
2.解析・シミュレーションの具体的内容 (参考文献も)
シミュレーションによるとしか書いてない論文が多すぎる.これは,「でたらめなんですが」といっているのと同じ.再現・追試ができない論文は,科学論文でない.シミュレーションなら,何をどんな仮定でどのようにシミュレーションしたかが明示(他の人が追試できるように)されなくてはならない.多くの論文が,解析式中の数値積分をモンテカルロ法で求めただけなのに,シミュレーションと呼んでいる.
3.数値例
まず,数値例の諸元(条件)を明示すること.シミュレーションなら試行回数が必須.もちろん諸元の物理的意味が明確であることが必要.つまり何故,その諸元が選ばれたのか理由が必要.数値例は,「例」にすぎない.そして結論の「代表例」でなくてはならない.
4.考察(数値例から結果を読み取る)
数値例(グラフ)だけでは挿し絵と同じ.数値例から導き出された言葉が「結果」.「同じ誤り率10^-3を得るために,提案方式は-20dB少ない電力で良い」など.当然複数ある.
5.結果から導き出せる結論(論文全体の結論)
「結果」は,数値例の条件下でのもの.それを一般化する.
「提案方法は,フェージング環境下で実用的誤り率を,従来よりはるかに小さい電力で実現」
ここで,数値例に戻って,本当に結論や結果の証拠にふさわしいものを提示したかチェック
5?4?3?4?5 を可能な限り繰り返す.時間切れとなったら,今後の課題も明確になる.
6.序論
結論がしっかりしたら,その結論の意味(価値)を明示する文章を序論として述べる.
アブストラクトとタイトル
以上のまとめがアブストラクト.それのまとめがタイトル.
(でも泥縄編では,タイトルが先にあることが多く,内容の不一致で苦しむ.それはまたそれ.
(今後の反省の材料にしなさい.
暫定公開 2002.2.1