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著者 淺井裕介
題目 マルチキャリア変調を用いた空間多重無線システムのための伝搬路トラッキング技術
出典 博士論文
要約 著者は,本論文においてマルチキャリア信号を用いた空間多重無線システムにおける伝搬路変動に起因する伝送特性の劣化を抑制する伝搬路トラッキング技術を提案した.また,計算機シミュレーションおよび実験装置を用いた評価を通じて,提案技術の特性改善効果ならびにハードウェア実装に対するフィージビリティの高さを示した. 第1章では,本論文の背景および解決すべき課題について整理を行った.公衆無線LANでは,接続される端末はモバイルデバイスが主流であるため,ユーザの移動に伴う伝搬路の変動が誤り率特性の劣化要因となることが想定され,これを本論文の目標と設定した. 第2章では,公衆環境において無線LANを利用した場合の伝搬路変動に起因する特性劣化の確認,解決技術に対する要求条件,要求性能の設定について議論し,伝搬路変動に追従するトラッキング技術が必要であることを示した.そして,無線LANシステムにおける伝搬路トラッキング技術の要求条件を整理した.併せて,既存の伝搬路トラッキング技術はこれらを全て満足しないため,新たな技術が必要であることを確認した. 第3章では,本論文の一つ目の提案技術である「判定帰還形伝搬路トラッキング技術」の詳細な説明ならびに特性評価を行った.提案技術では,受信機において送信信号レプリカ行列を再生し,これを用いて伝搬路仮推定を行うことで無線フレーム内のパイロット信号の挿入を不要とし,IEEE 802.11規格との適合性を持たせている.提案技術について,計算機シミュレーションにより特性評価を行い,受信機が歩行速度で移動する環境において,静止環境とほぼ同等の特性を実現することから,性能面の要求条件も満足することを確認した.また,本論文の第2章において設定した目標をすべて達成することを確認した. 第4章では,第3章で提案した判定帰還形伝搬路トラッキング技術における伝搬路の仮推定値の重み付け合成処理における課題について考察を行い,これを基に本論文における二つ目の提案技術である「逐次合成判定帰還型トラッキング技術」について,詳細な説明および特性評価を行った.第4章の提案技術では,推定された伝搬路仮推定値と直前に用いた伝搬路推定値とを重み付け合成し,これを現在のブロックに伝搬路推定値として用いることで伝搬路推定値の更新頻度を高めている.提案技術について計算機シミュレーションによるSFER特性改善効果を行い,第3章の提案技術と比較して所要CNR特性を1.0dB改善する効果を生むことを明らかにした.この改善効果は高速伝送エリア(物理層における伝送速度162Mbit/sを達成するエリア)を10%拡大することが可能であることを明らかにした. 第5章では,第3章の判定帰還形伝搬路トラッキング技術をFPGA (Field Programmable Gate Array) 回路に実装した実験装置の概要ならびにフェージングシミュレータを用いた伝送特性評価結果を示した.実験結果と計算機シミュレーション結果が概ね符合した良好な特性が得られることを明らかにした.また,FPGAに実装された送受信回路の規模を,ゲート数を指標として定量評価を行い,提案する判定帰還型伝搬路トラッキング技術が,現実的な回路規模で実装可能であることを示し,実装のフィージビリティが高いこと結論づけた. 最後に,第6章において本論文を総括した.本論文提案技術を活用することで,モバイルデバイスを保有するユーザが移動する公衆環境において,無線LANを用いて安定した高速通信が実現可能となり,公衆無線LANユーザの体感品質 (QoE: Quality of Experience) の改善およびセルラトラフィックのオフローディングによるネットワーク運用コスト (OPEX: OPeration EXpense) の削減が実現可能となることを示した.
Authors Yusuke ASAI
Title Channel tracking techniques for spatial multiplexing wireless systems using multicarrier modulation
Authority doctoral thesis
Summary
年月 2017年9月
DOI/Handle
研究テーマ その他
言語 日本語
原稿/プレゼン資料 / (ローカル限定)


山里研究室/岡田研究室 研究業績データベースシステム