| 著者 |
山里敬也 |
| 題目 |
車車間・路車間通信 |
| 出典 |
電磁環境工学情報 月刊EMC, vol.29, no.8, pp.98-109 |
| 要約 |
自動運転の研究開発は,1960年代から始まっており,その度に話題に上ってきた.Google による自動運転プロジェクトに触発されたことが原因と思うが,現在,自動運転に関する話題がマスコミを賑わしている.我が国の自動運転研究開発の第一人者である津川定之氏によると,現在のブームは第4期であり,ここに来てようやく実用化を目指した技術の検証が始まっている状況であり,加えて,各国政府も自動運転車を睨んだ政策・規制の立案に着手しつつある(1).また,自動車メーカも2025年以降の自動運転車のリリースを発表するなど,自動運転はまさにホットトピックと言っても過言で無い.
現在,検討されている自動運転車の多くは自律走行車である.具体的には,車輌に搭載されたレーダ,LIDAR (Light Detection and Ranging),車載カメラ,超音波センサなどを用いて車輌周辺の詳細な3次元地図を作成し,この地図情報と予め車輌に持ち合わせている情報およびGPS等で得られる外部情報からコンピュータが総合的に解析し、ハンドル、アクセル、ブレーキなどの運転に必要となる動作を行う仕組みである(2).自律走行車は,特段のインフラ設備も必要としない,つまり,自動車メーカの努力で実現できる可能性がある.また,ディープラーニングなどの高度な画像認識技術,人工知能(AI)など自動運転に必須の演算・処理も,コンピュータの計算能力が飛躍的に増加した現在では,実用レベルで利用できる状況にある.このことも自律走行車の実用化に向けた研究開発を促進させている理由と考えられる.
一方で,今後の自動運転車の動向に目を向けると,自律走行車を基礎にしつつも,路車・車車間通信を活用することで道路インフラおよび周辺車輌と常時情報交換を行いながら走行する,いわゆる「つながる車(コネクテッドカー)」が注目される(3).とりわけ,その基盤となる路車・車車間通信については,実用に耐えるシステム運用が始まったばかりであり,自動運転車を見据えた今後の動向に注目が集まっている(4).
道路インフラから車輌に対し情報伝送を行う路車間通信システムは,道路側の漏洩同軸ケーブルを用いてカーラジオ(AM波)で伝送する路側放送に始まり,VICS(Vehicle Information and Communication Systems),そして 5.8 GHz帯DSRCによるITSスポットとして進展している.また,有料道路における料金自動収受システム(ETC: Electronic Toll Collection)も路車間通信システムである.さらに,警察庁のITSプロジェクトによって設置された光ビーコンによるUMTS(Universal Traffic Management System)も路車間通信による交通情報を提供している(5).
車車間通信システムとしては,700 MHz 帯高度道路交通システム(ARIB STD-T109)がある.このシステムで利用する周波数帯は,もともとアナログTV放送で使用していた周波数帯である.それまでも,5.8 GHz帯狭域通信(DSRC)システムを用いて車車間通信を行うことができたが,5.8 GHz 帯は、電波の直進性が強く、ビル影、大型車の後方等の見通し外には、電波が回り込みにくい.このため,ビルや壁に囲まれた交差点等の見通し外での利用に適さないとの指摘があった.そこで,700 MHz帯をITSに利用する案が検討され,2011年12月には総務省から認可された(4).
本稿では,我が国における路車・車車間通信について解説する.とりわけ,現行の路車・車車間通信システムである700 MHz 帯高度道路交通システム(ARIB STD-T109)を取り上げ,その概要を紹介する.700 MHz 帯高度道路交通システム(ARIB STD-T109)は,当初(2007年)は車車間通信システムとして検討が始まったが,その後,2009年には車車間・路車間共用方式として検討され,2012年の完全デジタルTVの移行の年にARIB STD-T109として標準化されている.この方式の特徴としては,単一周波数帯の共用による車車・路車共用通信方式がある.本稿では,この概説を中心に述べていく.
本稿は次のように構成される.まず第2章ではITSと関連する無線通信技術の略史について述べる.容易に想像できることであるが,無線通信技術の進展に歩調を合わせるように自動車向け無線通信技術も進展している.とりわけ,携帯電話の普及に伴う技術の進展,各種デバイスの小型・省電力化は大きいと考える.また,自動運転技術もまた無線通信技術の進展に呼応する形で発展しており,興味深い.第3章では現行の路車・車車間通信システムである700 MHz 帯高度道路交通システム(ARIB STD-T109)について概説する.第4章では,未来のITSとそれを支える無線通信技術,とりわけ未来の自動運転車である「つながる車」について筆者の愚考を述べる.最後に第5章でまとめる. |
| Authors |
T. Yamazato |
| Title |
Vehicle to Vehicle and Vehicle to Infrastracture Communication |
| Authority |
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| Summary |
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| 年月 |
2016年12月 |
| DOI/Handle |
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| 開催場所 |
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| 研究テーマ |
高度交通システム(ITS)
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| 言語 |
日本語 |
| 原稿/プレゼン資料 |
/ 無し (ローカル限定) |